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恥ずかしがりやの母だから…

Project Story 03

故人様は人前で何かしたり発言したりが苦手ないわゆる奥手な女性。
ご主人は健在でしたがいつもニコニコ癒しタイプですが打合せでは何を伺っても答えは返ってこない少々心配な方だったのが正直なところです。
そのせいか、一人息子様が喪主であり、一人で全てこなしてみえました。
「すみません。初めてのことで何も分からなくて…。」
それでも私が感じたのは分からないことが分からない方が多く、だからこそ質問すら出てこないのが葬儀のリアルです。

それなのに、○○の時って・・・色々と先を見て色々質問をしてきてくださいました。
分からないと言ってみえたのに、ここまで先を考えていられてる事がすごいと感心しましたのは私と同じ歳の喪主様でした。

お父様を頼りにしてはいけない、自分がしっかりしないと。
そう一生懸命に、そして悲しんでいられる状況にないと感じました。

お式の中で喪主様へ提案をさせていただいたことが数個ありましたが、「恥ずかしがり屋の母なのでそーいうのは嫌がる気がするので。」とお母様を忍んでいただく提案はすべて断られてしまいました。

それでも私の中での想いは引きません。私と同じ歳でまだ葬儀のことなんて何も分からない喪主様が、産んでくれた事育ててくれた事、たくさんの思い出を残したくさんの愛情を注いでくれたお母様の為に、お一人で分からないという印象すら持てないくらいに葬儀の場での先を考えた質問をされ把握し動かれてみえる喪主様に、どうかお母様をちゃんと想い偲んで送っていただきたいと強く思いました。

お母様が皆の前では恥ずかしがるから。誰よりお母様への感謝を抱いているはずの喪主様。
それなのしっかりしないととの思いでお母様との大切な最期の時間を過ごせないなんて寂し過ぎる!!

ずっと頭の中でグルグル考えます。皆がいない時、通夜が終わり喪主様とお父様の家族だけの時間。
ここしかないと思いました。

今晩は、ちょうどお父様と泊まるとおっしゃってみえた喪主様。
通夜が終わりこの後ご飯を買いに行くと聞きました。
私は急いでお寿司屋さんへ車を走らせました。

「お寿司が大好きで、特にイクラさえあれば喜んでいた。」お母様との思い出の中でお話くださったことを思い出し、お母様へお供えさせていただくイクラづくしのお寿司を1人分。 そして、イクラもちゃんと入った1人前の握りを2パック買って急いで開館へ戻り喪主様のもとへいきました。
「よろしかったらお母様の大好きなイクラで一緒の夜を過ごしてあげてください。」
実は通夜前に、一度お母様のお顔を見つめ涙ぐんでみえた喪主様の姿がありました。
けれど、私と目があうと、グッとその涙をこらえられた様な感じを受けたんです。
男性は泣く事が恥ずかしいと思ってしまう方が多いからです。
泣いているところを見られたくなかったんです。

私はお寿司をお渡しし、失礼させていただく際に喪主様へこうお伝えしました。
「〇〇様。一人息子様で、お母様は可愛い大切な息子様だったはず。
それだけに、〇〇(息子様)もお母様への感謝は大きいはずです。
だから泣いて当然だし、泣くことを恥ずかしいだなんて思わなくていいんですからね。」
すると、ポロポロ…涙を流しうなづいてくださいました。

そして全ておわり、お帰りになられる時。
終始本当に何も分からないはずが、そんな印象すら受けないほど、しっかりされていた喪主様に、感謝してもしきれないほどの大好きな大切な存在のお母様の為に、一生懸命気丈に頑張っていらした喪主様に、安心していただきたくて。お見送りさせていただく最後に伝えました。
「○○様の想い、絶対にお母様に届いてますからね。お母様への親孝行出来ましたね!とても立派に務められたと思います!!」

喪主様は、「ありがとうございます。」そう言って、安心されたようにニッコリ微笑んでくださいました。